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クリステンセン教授を偲んで

イノベーション分野の知の巨人であるクレイトン・クリステンセン米ハーバード大経営大学院教授が1月23日に亡くなられた。

JINは2015年11月にNECと共に教授を日本に招聘し、丸1日一緒に仕事する機会があった。その1日で教授の温かいお人柄に直接触れる機会があったので、そのことを教授への追悼文として記しておきたい。

クリステンセン教授の温かいお人柄:教授とはJINのオフィスで様々な議論をする機会を得たが、大変貴重で素晴らしい時間だったと改めて思う。教授と紺野、西口の3名で記念写真を撮ることにしたが、教授は2メートルを超える長身であり、3人で並んで写真を撮ろうとすると、どうもバランスが悪い。すると教授はウインクをしてにっこり笑い、「これでどうだい?」と言って、いきなり床に膝をついてポーズをとってくださったのだ。2人ともびっくりして一瞬言葉を失ったが、さらに驚きが待っていた。「私の肩の上に手を乗っけると、いい写真になるよ」と笑顔で語りかけてくださるのだ。そうやって撮られた写真がこちらだ。本当に暖かい、茶目っ気のある知の巨人であった。

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クリステンセン教授を囲むJINの紺野(右)と西口(左)
2015年11月

教授の問題意識:打ち合わせの場面では、既存組織からイノベーションを起こすことの難しさについて多角的に議論をした。そのなかで教授は、イノベーション活動の本質である試行錯誤を本来、支えるはずの経営学やファイナンスの理論が追いついていないこと自体が問題であると主張され、事実、その内容はNECのイベントでも語られた。「ハーバード流のビジネススクール教育にも大きな課題があるのだ」とごく普通に語っておられたのがとても印象的だった。そのご示唆もあり、JINはイノベーション・マネジメントシステムのISOの国際規格づくりに積極的に関与していくことになる。

クリステンセン教授が残したもの:その日の最後の打ち合わせは帝国ホテルのラウンジで行ったが、JINの創業メンバーの一人である元ソニー社長の安藤国威氏とも素晴らしい議論を展開していた。イノベーターのジレンマ、ジョブ理論、人生に関わる大局的な視点などクリステンセン教授が私たちに残した高い視座の知恵は奥深く本質的だ。故に、教授は多くの人に影響を与えてきたが、これからも多くの人に影響を与え続けることは間違いない。

クリステンセン教授の今までのご功績に改めて敬意を表し、教授のご冥福を心よりお祈り申し上げたい。

一般社団法人Japan Innovation Network
Chairperson 紺野 登
代表理事 西口 尚宏

◎DSC05872

クリステンセン教授と安藤国威氏(元ソニー社長、JIN理事)
2015年11月

2015年11月来日時のBiz/Zine記事