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活動報告

2019.10.16開催「JINイノベーション・マネジメントシステム フォーラム」で各国のISO策定責任者が語ったこと

産業史上初の「イノベーション・マネジメントシステム」(以下IMS)についての国際規格:ISO 56002が今年7月に発行されました。JINは、国内審議団体としてこの規格の策定に2015年から直接関わってきましたが、規格の発行を受けて、10月16日に策定の中心メンバーであるフランス(議長国)、スウェーデン、アメリカの代表者や、日本でIMSに関する政策を所管する経済産業省の幹部、IMS構築に向けてすでに動き始めている企業の責任者にご登壇いただき、規格設立の背景・概要や今後の動向について議論する公開フォーラムを開催しました。

300名近い参加者をお迎えしたフォーラムの内容から、鍵となるポイントについてご共有したいと思います。

IMSを規格化するという考えは欧州が起点となっていますが、「その原点はリスクマネジメントにある」とスウェーデンの代表者は語りました。激動する世の中で、組織の最大のリスクはイノベーションを興す組織能力が低いことであるという問題意識です。「リスクマネジメントの観点で、自組織のイノベーションを興す能力を客観的に判断する基準が必要」との考え方にもとづき、2008年にEU主導でIMSの規格化が始まり、2013年には欧州規格が発行されました。同じ年にISO TC279(テクニカル・コミッティ)が設立され、2019年のISO56002の発行に至っています。

もうひとつの視点は、IMSはイノベーション活動の成功確率を上げるための経営システムであるという考え方です。イノベーションを興す組織能力の有無をリスクマネジメントの観点で見ながら、成功確率を上げるための経営を行うというのは日本ではまだ浸透していない考え方です。

フォーラムでは、国や企業の競争力強化の観点でもIMSが語られました。アメリカの代表者のプレゼンでは、世界各国の競争力ランキングをもとに、いかに国の競争力を高めていくのか、一部の個人に依存したイノベーション活動(競争力強化の活動)は効率が悪いこと、国の競争力を高めるためには再現性のあるやり方で持続的なイノベーション活動が必要であることが語られました。“リスクマネジメント”と“競争力強化”の観点は、表裏一体であり、イノベーション活動が本質的には成長戦略の中心であることがわかります。

スウェーデン、アメリカからの登壇者に、OKIのチーフ・イノベーション・オフィサーを加えたパネルディスカッションでも、活発な議論が行われました。登壇者が共通して語ったことは、1)経営者の役割の重要性、2)自組織のイノベーション活動の現状についてアセスメントを行ってからIMSを構築 していく方法論、3)IMS視点での人事施策の重要性でした。また、企業文化やコミュニケーションなどのソフト面もIMSの重要な要素であることが語られました。

終わりに:開催から2ヶ月近くが経ちましたが、フォーラムに参加された多くの企業で具体的なIMS構築活動が始まっています。JINは、2013年の設立時から「大企業からイノベーションは興らない」という定説を覆す活動をしてきましたが、そのための方法論が“ISO 56002”という形で、世界規模で形式知化されたことにより、既存組織からのイノベーション競争が世界規模で加速していくと考えています。引き続き、数多くの実例を皆さんと一緒に生み出していき、日本企業の競争力強化に貢献したいと考えています。