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活動報告

2020/10/14開催「第2回 JINイノベーション・マネジメントシステムサミット」レポート(第8弾:アメリカセッション(1)-後編-)-品質管理からイノベーション・マネジメントへシステムを移行せよ-

日米欧をつないで開催した「第2回 JINイノベーション・マネジメントシステムサミット(主催:一般社団法人Japan Innovation Network、以下JIN)」の「アメリカセッション(1)」では、「アメリカはIMSにどう向き合っているのか?」をテーマに、ISO/TC 279イノベーションマネジメント米国審議委員会委員長のフランク・ヴォール氏と、同副委員長のリック・フェルナンデス氏が登壇。前編のレポートでは、品質管理システム(QMS)とイノベーション・マネジメントシステム(IMS)との相違点について議論を交わした。

不確実な時代にブレークスルーを起こすには

議論は、これからの世の中におけるイノベーションの力について発展していった。創造的な破壊やイノベーションに対するシフトが起きてきた一方で、世界は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、大きな変化を求められるようになっている。JIN代表理事の西口尚宏は、「不確実な状況が続く中でブレークスルーはどこにあるのだろう」と問いかけた。

これにフェルナンデス氏が答える。「リーマンショックの後、2008年、2009年には多くの会社が倒産した一方で、一部の企業は新しいアイデアやサービス、製品に再投資をして、2020年代までにビジネスリーダーへと育った。その活動は、事業継続マネジメントシステム(BCMS)の標準規格であるISO22301へとつながった。リーマンショックや日本の東日本大震災といった試練を乗り越えた企業は、強靭性が増していて、成長したことがわかる」。COVID-19に世界中が戦々恐々としながら経済活動を持続させていかなければならない今、これをイノベーションによって乗り越える企業が強くなれるというメッセージである。ISO22301とISO56002の要素を合わせると、企業の強靭性が増していくというのだ。

 ヴォール氏は、「今では、品質管理システムのISO9001と、事業継続システムのISO22301、そしてイノベーション・マネジメントシステムのISO56002の3つをマネジメントシステムのトリプルクラウンと呼んでいます。王者のビジネスエクセレンスの三要素というわけです」と説明した。

従来のマネジメントシステムから新しいマネジメントシステムの移行

ここで西口が日本企業の状況に目を向けた発言をした。「日本人は改善も制御も大好きで、さまざまな機会をコントロールしがちだ。多くの組織はISO9001認証を取得している。しかし、これはまだ、ビジネスエクセレンスの道のりの始まりに過ぎないと聞こえた。トリプルクラウンに立脚してより良いマネジメントシステムを設計し、未曾有の変革期を乗り越えるための始まりなのではないか」。

これに対してヴォール氏は、「その通りだ」と答えた後、自身が通ってきた道のりについて説明した。「最初の取り組みはフロリダ電力でのQMSから始まった。日本の科学者やエンジニア、デミング賞を主催する日本科学技術連盟(JUSE)と協力し、フロリダ電力では100人ほどのメンバーと協働していた。次に、ビジネスの強靭性について、危機的状況からどのように回復するかの手段を身に付けることが重要だと知った。これがISO22301につながっていく。その上で、イノベーション・マネジメントシステムの標準化への動きが生まれ、ISO/TC 279に対応する米国審議委員会であるUS TAG(テクニカルアドバイザリーグループ)-TC279のチェアマンになって、議論を進めることになった」。

フェルナンデス氏も、「ISO9001があって、それが進展して、22301に進化し、56002に進化していった。覚えておいて欲しいのは、IMSは今後もっとやりやすいプロセスになるだろういうこと。ISO9001を取得していれば、それがベースになって、ISO56002に移行するのは比較的容易だ。ひとつのマネジメントシステムから、もうひとつのマネジメントシステムに移行すると考えれば良い。ここで考えなければならないのは、単にISO9001からISO56002に移行すれば良いのではないこと。ISO56002に軸足を移行することの意義、イノベーションのレベルの違いを認識する必要がある」と続けた。

イノベーションはシステマチックに起こせる

ここまでの議論を受けて、西口は「QMSからシフトしていく先にIMSがあることはわかってきた。それではアメリカ企業のコミュニティはIMSの考え方をどう捉えているのか」と問いかけた。

これにヴォール氏は、「アメリカ人の当初の考え方としては品質管理のISO9001は不承不承始まったようだった。日本企業と違って、品質管理はあまり導入が得意でないのだ。しかし実際に導入を始めて、アメリカ企業でもQMSによりメリットが得られるようになり、連邦政府も関与するようになった」と、QMSが導入され始めた当初を振り返った。

続けてフェルナンデス氏は「イノベーションが大切であることは日米を問わず理解はされている。しかしこれまで、ブレークスルーは偶発的に起こすことはできても、システマチックに起こすことはできないと考えられていた。ところが、世界中のIMSに対する知見を集めてみたら、イノベーションへのブレークスルーを起こす体系的な方法があることがわかってきた。望み通りの成功の方法があったのだ」と語る。

そして、フェルナンデス氏は、「私は2年前に来日したときに西口さんと出会って、日米のIMSの関係性を深める機会を得た。アメリカに、イノベーションマネジメントの方法を学び、認証資格を発行出来るIAOIP(インターナショナル・アソシエーション・オブ・イノベーション・プロフェッショナル)という組織があるが、IAOIPはJINとの連携をすることになった」と発表した。

オンラインセッションの壇上で西口が合意書に署名をし、フェルナンデス氏は、「今日、10月14日は世界標準の日だ。この日に署名をして、両者がパートナーになるというのは、なんという偶然だろう」と語って、アメリカセッション(1)が幕となった。

アメリカセッション(2)前編に続く。