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2020/10/14開催「第2回 JINイノベーション・マネジメントシステムサミット」レポート(第4弾:欧州セッション-前編-)-企業、病院、地域で具体化する欧州のイノベーションマネジメントの今-
日米欧をつないで開催した「第2回 JINイノベーション・マネジメントシステムサミット(主催:一般社団法人Japan Innovation Network、以下JIN)」の欧州セッションでは、「欧州はIMSにどう向き合っているのか?」をテーマに議論が交わされた。登壇者は3人。スウェーデン国立研究所(RISE)イノベーション・マネジメントシステム プロジェクト責任者でJINアドバイザーのマグナス・カールソン氏と、アンプリファイ プレジデント パートナーのグンナー・ストーフェルト氏、フィンランド エスポー市 エスポーマーケティングCEOのヤーナ・トゥオミ氏である。
「イノベーションのプロ」を認定する仕組みを作るスウェーデン
スウェーデンから参加した2人は、イノベーションマネジメントに関する人材育成についてプレゼンテーションを行った。RISEでイノベーション・マネジメントシステム(IMS)の標準化に携わるほか、ISO TC279 イノベーションマネジメントのスウェーデン審議委員会委員長も務めるカールソン氏は、個々のイノベーション活動をつなぐOSのようなものとして、IMSの国際標準のISO56002が作られたと説明する。
してIMSによるゲームチェンジの注目点として、ヨーロッパでは新しい職業が生まれていることを挙げる。イノベーションマネジメントは、組織内の人が実現するもので、理解している人、スキルのある人が必要であり、そうした人材がサポートすることで企業全体のイノベーションマネジメントの能力が高まる。そこでRISEでは、イノベーションマネジメントのプロフェッショナルモデルを作り上げ、トレーニングのプログラムを用意している。プログラムを受けることで、イノベーションマネジメントのスキルを身に付けたことをRISEが証明するものだ。カールソン氏は、「RISEのプログラムでは、イノベーションマネジメントに関するスキルを持ったプロとして働ける人材であることを認定している。最近、西口(尚宏、JIN代表理事)がスウェーデン以外の人として初めて認証を受けた」と語る。
エリクソンやカロリンスカ大学病院でプロが活躍
そうしたイノベーションマネジメントの「プロ」はスウェーデンの企業で実際にどのように働いているのか。カールソン氏は、世界の通信機器大手のエリクソンと、ストックホルムで最大規模である医療機関のカロリンスカ大学病院の例を挙げた。エリクソンではRISEのプログラムで認定された人材が約300人に上り、世界中で能力を発揮する場が提供されているという。またカロリンスカ大学病院では、トップマネジメントが病院の中でISO56002を導入し、100人以上がイノベーションマネジメントのトレーニングを受けてイノベーションのプロフェッショナルとして活動しているという。
ストーフェルト氏は、企業のイノベーション能力を高める支援事業を行うアンプリファイのプレジデントを務める。同社は、世界各国の企業と500以上のプロジェクトを推進するほか、1000人以上のイノベーションマネジメントのプロフェッショナルを教育している。ストーフェルト氏「強いイノベーションマネジメントの能力をつけるためには、プロアクティブで体系的なアプローチが必要であり、それが企業の変革のための筋肉になる。私たちはそれをサポートしていく」と、イノベーションへの準備の必要性を説いた。
都市がイノベーションのエコシステムを形成するフィンランド・エスポー市
フィンランドのエスポ・イノベーション ガーデン(EIG)を代表して参加したトゥオミ氏は、イノベーションマネジメントのエコシステムについてプレゼンテーションした。EIGとJINは業務提携関係にあり、友人として参加してくれたことを感謝したいトゥオミ氏はフィンランドの首都ヘルシンキからほど近いエスポー市で、EIGを経営し、エスポー市の持続的な成長の実現に向けた活動を行っている。持続的な成長に欠かせないのがオープン・イノベーションであり、そのためのエコシステムを提供しているというのだ。「エスポー市では、市、大学、スタートアップなどがエコシステムを作り、イノベーションのネットワークが作られている。オープン・イノベーションには多くのコラボレーションが必要であり、起業家にとって素晴らしいプラットフォームになっている」と説明する。
こうした環境から、エスポー市は国際アワードを数多く受賞している。「2016年、17年には世界で最も持続可能な都市に認定され、さらに最も幸せな都市、最もインテリジェンスなコミュニティといった賞ももらっている」(トゥオミ氏)。都市にイノベーションのネットワークができあがり、AI(人工知能)、量子コンピュータ、マイクロエレクトロニクスなどの先端産業の人材の集約があることで、エコシステムが形成されていくのだ。トゥオミ氏は、「フィンランドの通信機器ベンダーのノキアは5Gのネットワークをここで開発している。丸紅、DNP、3M、ベンツなど世界有数の企業もエスポーのオープン・イノベーションのエコシステムを利用している。私たちは、日本企業に向けた“ジャパンイノベーションパーティ”を2020年にフィンランドで実施した。日本企業もイノベーションのために、エスポーのエコシステムを活用してほしい」と訴えた。
このように、一企業の枠を超えて、地域レベルでのイノベーション経営が実践されているのが北欧である。
次回、欧州セッション中編に続く。