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活動報告

2021/10/28開催「第3回 JINイノベーション・マネジメントシステムサミット」開催レポート[第3弾]海外セッション-欧州で進むIMSの普及とグリーンイノベーションの潮流

2021年10月28日(木)開催
【開催レポート3】 第3回JINイノベーション・マネジメントシステムサミット

今年で第3回目の開催となるJINイノベーション・マネジメントシステムサミット。日本セッション1では「イノベーションに関するビジネスパーソン1000人調査」の結果とそこから導き出される考察について、日本セッション2ではイノベーション経営に挑戦している3社の事例紹介について、それぞれお伝えしました。

【海外セッション】欧州で進むIMSの普及とグリーンイノベーションの潮流 
サミットを締め括る形で開催された海外セッションでは、IMS先進国であり、SDGs先進国でもあるスウェーデンのマイケル・ジェイコブ氏を迎えて最新事例を紹介していただき、その後パネルディスカッションを実施しました。JINは、スウェーデンの国立研究所であるRISEと業務提携を結んでおり、その協定に基づく活動として当セッションを行いました。
講演:スウェーデンのIMSとグリーンイノベーションの動き
在日スウェーデン大使館 科学・イノベーション参事官
マイケル・ジェイコブ氏

■世界各国をきつけるテクノロジーとIMS
科学・イノベーション参事官として在京スウェーデン大使館勤務のマイケル氏は、「現在のスウェーデン政府は、新しいテクノロジーを歓迎しています。スウェーデンは人口が少ないため、作るプロダクト、サービスは世界各国を惹きつけるものでなければなりません。」と言います。その結果、GDPの約50%は輸出で構成されており、その背景にはスウェーデンの国家的なイノベーション・マネジメントシステムが大きな役割を果たしているそうです。

■社会的な課題に対してソリューションをもたらす国家的なIMS構築
では、スウェーデンはどのようにして国家的なイノベーション・マネジメントシステムを構築していったのでしょうか? マイケル氏は、「社会的な課題に対してソリューションをもたらしたいという意図がありました。そのソリューションがあれば、スウェーデンだけでなく、世界も社会全体も助かり、スウェーデンの競争力の向上にもつながるということを念頭に置いてきました。」と言います。イノベーション・マネジメントシステムは、首相がイノベーション協議会の会長をしており、多くの省庁や公共機関など、様々なステークホルダーを関与させてできています。
なお、競争力強化のために共創を必要としており、大学や業界、公共部門での交流、国際的なコラボレーションを重視し、日本をはじめとする他国との共創を大歓迎しているとのことです。

公共分野でのIMS実導入事例として、「カロリンスカ大学病院」を挙げました。こちらはIMSを世界で初めて導入し世界有数のイノベーション活動を進めている大学病院であり、生理学や医療の分野でノーベル賞に選出された実績を持ちます。

■グリーンイノベーションの事例
スウェーデンで行われているグリーンイノベーションの2つの事例をご紹介いただきました。スウェーデンでも郊外に住む人たちは職を探すのが難しいという問題がある中、スウェーデン北部にある2つの企業がグリーンイノベーション分野で雇用を生んでいます。
一社は、グリーンバッテリーでリチウムイオンバッテリーを作っている「ノースボルト」というスタートアップ企業で、再生可能エネルギーを活用したグリーンなバッテリーを世界にもたらし、数十億円の企業価値を誇るそうです。
また、スウェーデンを代表する大企業3社が集まって、鋼鉄を化石燃料からではなく水素から生み出す「ハイブリット」というプロジェクトも進んでいるとのことです。2026年に実用化予定ですが、既にボルボの新車両への提供がスタートしているとのことです。

■日本とスウェーデンが協業していくために
「RISE(スウェーデン政府のもとにあるイノベーション推進研究機関)とJINと共同で、産業界のポストCOP26の産業構造変革とグリーンエコノミーをテーマにした ハイブリッドイベントを12月15日にスウェーデン大使館で行います。サーキュラーエコノミーで競争力を推進するということで、オープン・イノベーションの話や、継続的な活動事例も紹介する予定です。もし関心があれば、ぜひ共創をしましょう。」とマイケル氏は締めくくりました。

【パネルディスカッション】
マイケル・ジェイコブ氏のプレゼンテーションの後は、JINの西口、紺野が加わり、パネルディスカッションを行いました。

■「共創力」によって「競争力」を高める
マイケル氏のプレゼンを通じて見えてきたことの1つに「共創」と「競争」の関係性があります。スウェーデンというと、「共創」のイメージがありましたが、それは同時に世界における「競争力」を高める意図があります。その具体的なアクションとして「非石油国を目指す」という取り組みがあります。
「なぜスウェーデンが2045年に非化石国になるという目標を立てているのか」と西口が質問したところ、マイケル氏は「環境への取り組みは緊急性が高く、二酸化炭素排出量の削減の次のステップとして非化石化に取り組むことになりましたと述べた上で、「人類はすぐにでも変わらなければならないことを知っています。その中で、今ソリューションを提示できれば、スウェーデンの競争力を高めると同時に世界をより良くすることができる」と述べました。

■幼稚園から始まる共創教育
「個人間ならともかく、国レベルで異なる背景の人たちが一緒に仕事をする際に、倫理的な行動指針のようなものはあるか」という紺野の問いに対し、マイケル氏は以下のように話しました。
「スウェーデンでは学校教育の一環として幼稚園の頃からコラボレーションをするように教わっています。一緒にソリューションを模索するのにブレインストーミングから始まり、どんなアイディアでも大丈夫で、勝ち負けはないようにしています。また、スウェーデンの組織は非常にフラットなので質問してもいいという文化があり、より良い意思決定に繋がります。」

■イノベーションを「社会で利用されるもの」に定義づけをする
「イノベーションの話をするとき、これまでは発明、研究開発、会社レベルでしたが、マイケル氏は国家のイノベーション・マネジメントシステムの話をしており、それが重要です。」という紺野の言葉に、「スウェーデンではイノベーションを発明ではなく社会で利用されるものと定義づけることで、ソリューションから社会課題へというシフトが起きました。発明や研究開発を出発点にするのではなく、社会課題にフォーカスし、プル型で進めていくというシフトです。」とマイケル氏は続けました。

【海外セッション、ならびにサミット全体を振り返って】
海外セッションでは、IMS先進国であるスウェーデンの事例について深く学ぶことが出来ました。個別の取り組みの素晴らしさはもちろんなのですが、その背景には幼少期から共創的なカルチャーに慣れ親しんでいることや、イノベーションを社会課題の解決策として、スウェーデンの中だけでなく競争力強化と社会全体をより良くするものと捉えていることなどがわかりました。そして、気候変動などの背景から、私たちは待ったなしで変わらないといけないこともわかりました。

サミットの総括として紺野は、「本日の1000人調査はイノベーション活動に手をつけられないことによる漠然とした危機感を見える化し、IMSを道しるべにしながら日本が次の時代に入っていくきっかけになったと思います。本日は、それらをありとあらゆる視点からお伝えした事により、皆さんの中に証がうまれたら幸いです。」と述べました。そして最後に「それぞれのセッションで実践者の話を聞き、共通しているのは今がチャンスということ。来年の第4回のサミットでは、日本がここまで変わったということをお届けしたいと思います。」と西口がまとめて、第3回JINイノベーション・マネジメントシステムサミットは終了しました。

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