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日本・スウェーデン共同シンポジウム COP26後の産業構造の転換:競争力を高めるためのサーキュラーエコノミー
12月15日(水)、Japan Innovation Network (JIN) 、駐日スウェーデン大使館、スウェーデン国立研究所(RISE)、ビジネス・スウェーデン(スウェーデン大使館商務投資部)の4者は、スウェーデン大使館にて、共同シンポジウムを開催しました。オンラインおよび現地から200名を超える方々にご参加いただきました。
・スウェーデン大使館の講堂
シンポジウムは駐日スウェーデン王国大使 ペールエリック・ヘーグべリ閣下のご挨拶で開幕しました。閣下は「産業変革の推進において私たちが正しく行動し、スウェーデンや日本を含む世界各国が協力すれば、世界が直面している急速な変化や課題はチャンスに変わり得る」という啓発的な見解を示しました。
「私たちの世界的な挑戦は可能性に満ちています。グラスは半分空なのではなく、既に半分満ちているのです。より多くの研究、科学、イノーション、先進的な企業の台頭により、私たちは明るい未来を見出すことができます。日本とスウェーデンで共にこれを成し遂げましょう。」
・駐日スウェーデン王国大使 ペールエリック・ヘーグべリ閣下次に、ISO/TC279(イノベーション・マネジメント)の国内審議委員会委員長である西口尚宏(Japan Innovation Networkの CEO)によるスピーチが行われました。西口は、スウェーデンとの協力に係わる実体験と、イノベーション、IMS、サステナビリティの分野におけるスウェーデンの優れた功績を紹介しました。
「イノベーション、SDGsの双方の分野で世界を主導しているスウェーデンは、国家レベルでも、企業レベルでもIMSの考え方を理解しており、個人の努力だけではなく、システムとして機能するようIMSに取り組んでいます。スウェーデンから多くを学び、一緒に活動をしていきましょう!」
・Japan Innovation Network (JIN)、 CEO 西口尚宏続いて、経済産業省の木原晋一審議官から、本年策定された「グリーン成長戦略」と「グリーンイノベーション基金」について包括的な説明がなされました。木原審議官は、日本政府が脱炭素経済の実現に向けて打ち出した革新的且つ野心的な政策に注目するとともに、両国が享受できる明確な相乗効果と協働の可能性を強調しました。
「スウェーデンと日本は高度な技術やイノベーションを重要視し、それらを成長の強力な原動力としてきました。今日、気候変動と持続可能な成長への取組が世界的な急務であることを考えると、スウェーデンと日本はその解決策を見出すのに最適なパートナーだと言えるでしょう。人類にとって難しい課題であるからこそ、世界の英知を結集し、解決策を見出し、新しい未来を切り開くことが必要なのではないでしょうか。」
・経済産業省大臣官房審議官(環境問題担当) 木原晋一氏その後、スウェーデンで著名なイノベーションリーダーや専門家により、「競争力を高めるためのサーキュラーエコノミー」とのテーマで、それぞれの見識が発表されました。
RISEの国際事業開発部長であるピーター・アルべリアス氏は、スウェーデンのイノベーションを先導する重要な国家機関であると同時に、その活動の3分の1をグローバルに展開している同組織について紹介しました。
続いて、同バイオリファイナリー・エネルギー部門長のヨハンナ・モスバーグ氏が、炭素経済と炭素利用(CCU)の未来、そして「全ての化石燃料由来の製造物がバイオベースに置換できる」ようになった際の経済において推進役となるバイオリファイナリーについて、示唆に富む発表を行いました。
・RISE、ピーター・アルべリアス氏 と ヨハンナ・モスバーグ氏続いて、ケーススタディとしてスウェーデンにおける取組事例が2点紹介されました。
まず、スケールアップ企業Liquid Wind社のイェスパー・エングストランド氏は、再生可能エネルギーと回収した二酸化炭素を組み合わせて製造するカーボンニュートラル燃料「eMethanol」と日本の産業における可能性を紹介しました。続いて、スウェーデンのバッテリーメーカーNorthvolt社のイングリッド・カールソン氏が、同社の企業情報とミッション、そして製造工程における100%再生可能エネルギーと50%のリサイクル材料の使用により、「世界で最もグリーンなバッテリー」の製造とバッテリーのバリューチェーンにおける循環を生み出すことを目指していると説明しました。
・LiquidWind社、イェスパー・エングストラン氏とNorthvolt社、イングリッド・カールソン氏西口がモデレーターを務めたパネルディスカッションでは、参加者全員の積極的な発言を通じて、「この課題に満ちた変化の激しい世界においては、サステナビリティ、争力、そして協働が相互に密接に関連し合っている」という共通の見解に至りました。
ピーター・アルベリウス氏は、「今や地球の存続だけでなく、スウェーデンや世界の産業の存続もが危機に瀕しています。科学技術は、人類の重要な課題を解決するだけでなく、同時に未来に向けたビジネスを構築することができるのです。」と強調し、ヨハンナ・モスバーグ氏も「迅速な移行を実現するためには、さまざまなステークホルダー間のコンピテンシーとリソースを結びつける必要があります。(中略)これらの異なるバリューチェーンを繋げることが、持続可能性の鍵となるのです。」と続けました。
・西口尚宏がモデレーターを務めるパネルディスカッションシンポジウムは商務参事官のカシュテン・グロンブラード氏により、総括されました。「競争の場は、これまでの、いかに効率よく無駄を省くかという社内から、いかに価値あるパートナーとのプラットフォームを作るかという社外へと移っている。目的をもってイノベーションを起こせば、収益性の高い持続可能なビジネスアイデアが生まれ、実際に需要を満たし、社会のニーズに応えることができるのです。」
・駐日スウェーデン大使館 商務参事官、カシュテン・グロンブラード氏最後にシンポジウムを通じて司会を務めたスウェーデン大使館 科学・イノベーション参事官のマイケル・ジェイコブ氏が、希望的な言葉でシンポジウムを締めくくりました。「私たちは共に多くの可能性を持っています。スウェーデンと日本は、未来の持続可能な世界のために、可能性を開拓する中で共創していくことができるのです!」
・駐日スウェーデン大使館 科学・イノベーション参事官、マイケル・ジェイコブ氏シンポジウムの後、大使公邸でレセプションが開催されました。参加者はスウェーデンの伝統的な飲み物や料理を楽しみながら、バーチャルブースを通じてシンポジウムのパネリストと様々なトピックで交流を深めました。
・ペールエリック・ヘーグべリ閣下公邸でのレセプション・ピーター・アルべリアス氏及びヨハンナ・モスバーグ氏とバーチャルブースで 交流する駐日スウェーデン王国大使ペールエリック・ヘーグべリ閣下と西口尚宏
Japan Innovation Networkは、本イベントの成功にご尽力いただいた関係各位、ならびにご来賓の皆様に厚く御礼申し上げます。本シンポジウムが、日本とスウェーデンのイノベーション、産業構造転換、産業競争力、持続可能性に向けた協働への第一歩となることを期待しています。
※本記事で使用されている写真の著作権は、Hiromi Johansson/スウェーデン大使館に帰属します。