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【第36回 オープン・イノベーション対話シリーズ レポート 】

山下 穣氏(株式会社NTTデータ経営研究所 知財戦略デザイナー )が語る
研究開発領域からの新事業創出
両利きの経営:新事業創出

概要:
36JINオープン・イノベーション対話シリーズでは、ファシリテーターであるJIN常務理事の松本 毅と株式会社NTTデータ経営研究所 知財戦略デザイナーの山下 穣氏が、「研究開発領域からの新事業創出」について対談いたしました。

スピーカー:
山下 穣氏
株式会社NTTデータ経営研究所知財戦略デザイナー(特許庁から委託)
(知財戦略デザイナーについて)
知財戦略デザイナーは、研究者に、その研究成果が大きく花開く、例えば大型共同研究への発展や事業化などの未来展望を提案します。そして、研究者が目指したい未来を実現するため、保護すべき研究成果や知財取得のタイミングなどの知財戦略を研究者目線でデザインし、知的財産権の活用を通じた社会的価値・経済的価値の創出を支援します。(特許庁HP より)

山下氏ご講演:
山下氏はNAISTにて分子遺伝学を専攻され、その後知財系大学院を修了後、東京大学新領域創生科学研究科博士後期課程にてバイオイノベーション制作を専攻され、現在は食品企業に在籍されています。

企業では、バイオ関連の研究開発・工業化に従事され、同時に研究所全体より新しい研究テーマ創出を促し、大学やベンチャー、及び他社と連携した新事業及び知財を創出されています。
副業としては大学全体の発明発掘からビジネスモデル立案及び他社との契約交渉等に従事されています。

今回、山下氏からは、「研究開発領域からの新事業創出」についてお話しいただきました。

特許庁委託 知財戦略デザイナー派遣事業とは:
まず、「知財戦略デザイナー」について、その役割と支援内容をお話しいただきました。知財戦略デザイナーとは、大学の研究成果を社会に還元する役割を担い、国のプロジェクト、企業へのライセンス・共同研究、スタートアップ設立などを実現します。

研究開発からの新事業創出について:
続いて、新事業創出に向けたビジネスプラン構築のステップを、それぞれのステップについて解説いただきました。

アイデア(コンセプト)の発見
機会の特定(市場選定と顧客課題の明確化)
アイデア(コンセプト)検証
プロダクト(ソリューション)の明確化
ビジネスモデル(マネタイズモデル)構築
戦略立案と計画化、リーダーシップ

各ステップの概要及びそれぞれのステップにおける重要なポイント、そして一般的に弱いと言われる②の市場選定と⑤のマネタイズについて、その理由も含めて詳細にご説明いただきました。

新事業創出事例:
狩野モデルをもとにした表を用い、大学研究室との融合、スタートアップとの融合など、これまで山下氏の関わった新事業の事例をご紹介いただきましたが、いずれの事例も山下氏が実際に関わったケースであるため、分析が明確になされていました。

最後に、ご自身の新事業創出のプロセスと、JINIMSコンパスとの共通点をお話しいただき、山下氏の講演は締めくくられました。

質疑応答では、皆様からのご質問に先立ち、松本より、アイデア創出のためのインプットについて山下氏に質問をさせて頂きました。山下氏はインプットの重要性を説きながら、その難しさについてもお話しくださいました。

松本からはその他の質問も投げかけながら、イノベーターとアクセラレーターについても意見交換をいたしました。松本はインドの経営学者の「イノベーションのスタートラインに立つときに重要なこと」についての言葉を引用しながら、外部ネットワークとの繋がりの重要性についても認識を同じくしました。

参加者からは、どのブリッジを取るのかの判断基準、市場性について、生成AI活用について、さらにはデザイン思考との共通点などのご質問も出て、山下氏からも明快な回答をいただき、松本からの意見も交え、とても活発な質疑応答となりました。

IMSAPについて:
山下氏のご講演を受け、松本より、「両利きの経営」=二階建て経営がなぜ注目されるのかについて、簡単にお話をさせていただきました。
本業でも新規事業でも、イノベーションを起こし続けることが企業の持続的成長に必要不可欠です。
その際、ISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)の原理原則を組織内で一体化して適応していくことが重要になります。

ISO56002に即したIMS実戦への道筋であり、最先端のイノベーションの知見、およびイノベーション・マネジメントシステム構築を通じて、日本の産業・企業の知識集約型共営・組織への転換を、加速支援するのが、JINIMSAP(スタジオからはじまり、キャンプ1,2,3へと続く一連の教育プログラム)です。

36回対話シリーズを終えて:
山下氏の知財戦略デザイナーというお立場から見える新事業創出について、大学と社会をつなぐ存在の重要性が非常に明快に理解できました。

ご自身の知見とともに、JINIMSAPの概念との共通点もお話しくださった山下氏に心からの感謝をお伝えします。