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【第39回 オープン・イノベーション対話シリーズ レポート 】

松波 晴人氏(大阪大学フォーサイト株式会社 代表取締役
大阪大学 招聘教授)が語る

新しい価値を生む方法論
Foresight Creation」の組織における実践
機会に関する意図をもとに「機会を特定」

概要:
39JINオープン・イノベーション対話シリーズでは、ファシリテーターであるJIN常務理事の松本 毅と、大阪大学フォーサイト株式会社 代表取締役/大阪大学 招聘教授/元大阪ガス・行動観察研究所長の松波 晴人氏が、「新しい価値を生む方法論 「Foresight Creation」の組織における実践機会に関する意図をもとに「機会を特定」」をテーマに対談しました。

スピーカー:
松波 晴人氏
大阪大学フォーサイト株式会社 代表取締役/大阪大学 招聘教授/元大阪ガス・行動観察研究所長

松波 晴人氏ご講演:
松波氏はコーネル大学でデザインと心理学を学び、行動観察の研究をされ、続いて「行動観察」ビジネスを開始されました。さらに「大阪ガス行動研究所」を設立し大阪大学でForesight Schoolを開設されます。2018年には「ザ・ファーストペンギンス 新しい価値を生む方法論」を講談社より出版され、現在は大阪大学100%出資子会社「大阪大学フォーサイト株式会社を設立し、代表取締役社長に就任されています。

「行動観察」とは?
ファクト:新たな事実を得て、インサイト:新たな仮説を生み、フォーサイト:新しい価値を生む、つまり言語化できない本質を得るための方法論です。
行動観察によって潜在しているニーズ/機会/課題を掘り出し、イノベーションに繋げることができます。

「会社の将来を支える新しい価値の創造を君が担当してくれないか?」
(*新しい価値=新サービス・新商品・新事業)

松波氏のご講演はこのテーマで、下記3点の内容で展開されました。

  1. 背景
     従来の持続的な競争優位性を保てた時代は終わりを告げ、現在は一時的な競争優位の連鎖、つまり新しいものを生み出し続けなければならなくなっています。ドラッカーも企業の基本的な機能をマーケティング、イノベーション(新しい価値を生み出す)ことだと言っていますが、2030年に必要とされる能力や知識の上位も「戦略的学習力」「心理学」「社会的洞察力」などになっています。
     IBMが行った世界のCEO1700人インタビュー研究においても、業績の高い企業群は低業績企業群に比べて一次情報を含めて情報を収集しているか、情報からインサイトを出しているか、インサイトをもとに行動を起こしているかの3点が優れており、これらの3つのステップを踏んでいるかどうかが成功の鍵になっていると言えます。
  2. 新価値創造の方法論
     そこで松波氏が開発されたのが、新価値創造の方法論「Foresight Creation」です。Foresight Creationという方法論は、価値創造のプロセスが整理されており、必要なコンピテンシー(8つの玉)の教育プログラムを開発済みです。
     Foresight Creationは大阪大学において確実な実績と評価を得、他の大学や高校、そしてビジネス界でも広がりを見せています。特にビジネス界においては、新価値が生まれることに加えて共通言語ができて議論が速くなった、という声が上がっているそうです。
    ここで新しい価値を生むForesight Creationに興味のある方への推薦図書として松波氏の著書である『The First Penguins 新しい価値を生む方法論』(講談社)をご紹介いただきました。
    Foresight Creationにおいて最も大切なポイントは、学び続けることです。Foresight Creationにおける、ファクト、インサイト、フォーサイト、アクションという全体像の中で、今回、リフレームについてお話しいただきました。
    リフレームとは、ビジネスにおいてそれまで常識とされていた「解釈(インサイト)」や「ソリューション(フォーサイト)」の枠組みを、新しい視点・発想で前向きに作り直すことです。松波氏は旭山動物園、ウォークマンなどの例を用いてリフレームを明快にご説明くださいました。
    新しい価値が生まれるプロセスにおけるアブダクション(仮説的推論)の重要性をワークを用いて解説いただき、このパートは締めくくられました。
  3. 新価値の組織の在り方
    新価値の組織の在り方として、既存の組織と繋がりつつ、異なった文化、運用で行う出島方式、桃太郎伝説のような神話方式をご説明いただきました。

質疑応答:
数多くの質問が出る中、体制の移行について、アブダクションの概念、さらにはAIの活用などについてもご質問いただき、松波氏は豊富な事例を用い、概念の丁寧な解説をすることでお答えくださいました。

IMSAPについて:
松波氏のご講演を受け、松本より、イノベーションを起こすための「IMS実践への道筋」についてお話をさせていただきました。
本業でも新規事業でもイノベーションを起こし続けることが企業の持続的成長に必要不可欠です。
その際、ISO56002(イノベーション・マネジメントシステム)の原理原則を組織内で一体化して適応していくことが重要になります。
ISO56002に即したIMS実戦への道筋であり、最先端のイノべーションの知見、およびイノべーション・マネジメントシステム構築を通じて、日本の産業・企業の知識集約型共営・組織への転換を、加速支援するのが、JINIMSAP(スタジオからはじまり、キャンプ1,2,3へと続く一連の教育プログラム)です。 

39回対話シリーズを終えて:
松波氏のお話をうかがう中で、Foresight Creationという方法論がアカデミックな現場にとどまらず、企業におけるイノベーションにおいても極めて有効に機能することがわかりました。
企業人であり、起業人であり、アカデミアでもあるという松波氏の、広く、かつ深い知見から学ぶところが大きく、松波氏が強調された「行動に起こす」ことを大切にしていこうと思いました。