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西口尚宏のイノベーション日記#5「国際ルールを創る活動からの学び」
1/20から海外出張が続いています。この2ヶ月で5都市(テルアビブ、ニューヨーク、バンコク、ワシントンDC、ロンドン)と往復していますので、10日に一度は海外との往復をしている計算になります。
特に、今年になって国連開発計画(UNDP)のイノベーション担当上級顧問という新しい役割が加わったこともあり、海外出張の頻度が増えています。
今週はロンドンで、イノベーション経営の国際標準化会議(ISO)にエキスパートとして参加しています。半年に一度、各国のエキスパートが集まり原案を練り上げていく作業に3年近く関わっていますが、もうすぐで完成するところまで辿り着きました。今回いくつかドラマティックなことがあり、過去の会議を振り返って、ルール形成の国際会議に参加する上で重要だと思う7つのことを備忘録的にまとめました。
多国籍の人と議論を通して合意形成をしていく上では、世界各国の癖のある英語を聞き取れることを前提として、次の7つのことが重要だと思います。
1. まず、その場に参加していること。
会議はランチタイムやディナータイムのオフレコ場面での意見交換も重要です。その場にいなければ、どうしようもありません。また、コンスタントに参加することで、各国参加者との信頼関係が生まれ更に良い議論が出来るようになります。
2. 自分の意見があること。
参加者と対等に渡り合うためには、知識だけではなく、信念に基づく意見があることが非常に重要です。知っているだけでは尊重されないように思います。当たり前ですが、情報収集の目的だけで参加していると相手にされません。はっきり言って無視されます。
3. 自らの意見を簡潔にわかりやすく説明できること。
発言しないのはマズイですが、長々と話すのは最悪です。文化背景が違う中で、言葉の定義すら違うのが当たり前なので、わかりやすく短く意見表明が出来ることはとても大切です。
4. 他人のわかりにくい、時として長々とした説明を聞き、そのポイントを瞬時に理解すること。
会議で長々と話す人はどの国にもいます。かつ、何を言っているのかわからないことも良くあります。わたしもその場面に国を問わず何度も遭遇していますが、辛抱強く聞きながら、何をこの人は伝えたいのか、というところに焦点を当てることが重要です。
5. 意見の違いを尊重すること。
意見は常に違うものです。従って、違う意見であっても、場合によってピント外れの発言であっても、あからさまに否定しないことが重要です。ある時、長々とピントのずれた発言を続ける某国の参加者がいました。みんなが辛抱強く説得しているのを見て、なぜ、そこまで辛抱するのかと尋ねたところ、「それがエキスパート・カルチャーなんだよ」との説明を受け、非常に納得したことがあります。
6. 目的がブレないこと。
ISOの議論では、考え方のフレームワーク自体を議論しながら進めていきます。今回も前回パリで合意したフレームワークをガラポンして一から再構築する場面がありました。国際標準化の仕事は、ゲームのルールを創る仕事でもあります。その時に、なんのためにという「目的」がずれていると無茶苦茶なことになってしまいます。今回もそれに関わる非常にドラマティックな場面があり、目的の重要性を改めて感じました。
7. 笑いを取ること。
関西の方には当たり前かもしれません。緊張してお互いの意見がぶつかる場面では、気まずい沈黙が続くことも良くあります。そんな時に、ちょっとした一言の「笑い」は本当に重要です。「笑いをとって一人前」は世界標準のように思います。わたしの周りでは、イギリス人とアイルランド人が非常にうまいと感じます。
まだまだ修行中ですが、会議の合間にそんなことを考えました。皆さんの体験と比べていかがでしょうか?次の日記は5月の連休前後(?)にお送りするつもりです。
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「西口尚宏のイノベーション日記」について;
「大企業からイノベーションは興らない」という定説を覆す活動に2009年に身を投じてから早や8年が経ちましたが、日々発見の連続です。おかげさまで、複数の加速支援先で具体的な成果が出始めたところですが、ご縁を頂きましたお一人おひとりに定期的に近況をお伝えする「西口尚宏のイノベーション日記」を2017年4月からお送りしています。JINは私が全力投球している活動ですので、どうしてもJINでのイノベーション活動の話題が中心になりますが、一般社団法人日本防災プラットフォームの代表理事としての活動もイノベーション視点で行っておりますので、国際防災の話題に触れることもあると思います。西口からの私信という形を取らせて頂きますので、気軽にご高覧賜れば幸いです。
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