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JINイノベーション便り

西口尚宏のイノベーション日記#4「2017年の“世界のイノベーション経営”の流れを振り返って」

海外出張の中で特筆すべきことがある時に情報共有も兼ねて日記をお送りすることに決めています。が、最後にお送りしたのが6月ですから、随分とご無沙汰してしまいました。

7月以降、5カ国を訪問しました。ブエノスアイレスにてイノベーション経営に関わる現地CEO達の意気込みを感じ、ニューヨークでは国連開発計画(UNDP)関係者の変革への真剣度を実感し、バンコクではタイ国首相がデジタル社会の到来を受けてタイ国を変革する意思表明を直接聞き、パリではイノベーション経営標準化の原案作りと、各国を飛び回って参りました。この日記は今年最後の出張になるクアラルンプールにて書いておりますが、この数ヶ月の総括として、「イノベーションに関して、今、すべての国が同じスタートラインに立っている」と強く感じています。

<イノベーション経営の国際標準化と普及>
2015年から経産省の依頼にもとづき、史上初となるイノベーション経営の国際標準化(ISO化)のテクニカル・コッティ(TC)にエキスパートして参加しています。イノベーション経営の原理原則を世界各国から集まったエキスパートと共に一つひとつ積み上げ、原案を各国に開示し、数百に及ぶコメントに対して一つひとつ答えながら原案を固めていくという作業です。この会議のために、ダブリン、ベルガモ、マドリッド、北京、パリに半年ごとに世界各国のエキスパートが集まり、原案を練り上げてきました。2018年10月には日本での会議も予定されています。なお、この作業は実は無給でボランティアベースであるという点がポイントで、意識が高くパッションを持った世界中の専門家とのコラボが最大の楽しみとも言えます。その原案作りも今回のパリミーティングでほぼ最終案が固まり、次の3月に予定されているロンドン会議にて最後の確認を行い、その一年後の2019年春に企画案が世に出ることになります。2019年は、いよいよ「既存組織からイノベーションを起こすための方法論」が世界に公開される年となります。

そんな中で、日本の経営者の肉声が聞こえてくるのが「イノベーション100委員会」です。イノベーションを持続的に興す取り組みをしている経営者の生声を日経ビジネスオンラインでお伝えしてきました。そこから見えるものは、「試行錯誤の連続」の重要性です。常に、より良い解を求めて模索を続けている経営者のみなさんの並々ならぬ覚悟と実行の姿が強烈に印象に残っています。ぜひ、こちらもご覧ください。

<イノベーション100委員会>
【第1回】
三井物産 安永竜夫
大和ハウス工業 樋口武男会長
ヤマトホールディング 山内雅喜社長

【第2回】
スノーピーク 山井太社長
ユーグレナ 出雲充社長

【第3回】
日東電工 髙﨑秀雄社長
日本ユニシス 平岡昭良社長
オムロン 山田義仁社長

【第4回】
三井住友フィナンシャルグループ 宮田孝一会長(座談会開催時は同社長)
野村ホールディングス 永井浩二CEO
ハーツユナイテッドグループ 玉塚元一社長(座談会開催時はローソン会長)

【第5回】
三井不動産 菰田正信社長
旭硝子 島村琢哉社長
パナソニック 津賀一宏社長

<SDGsとビジネス>
昨年より、SDGsをイノベーションの機会として捉え、事業活動を通してSDGsを達成するためのプラットフォーム「SHIP: SDGs Holistic Innovation Platform」を国連開発計画(UNDP)とグローバルに展開しています。SHIPを立ち上げてから一年余りの試行錯誤を通して、プログラムも大きくバージョンアップし、その過程で、SDGsは日本企業がリーダーになり得る分野ではないかと感じてきました。

11月8日には、経団連が7年ぶりに企業行動憲章を改定し、「経団連が目指しているSociety 5.0の実現はSDGsの理念とも軌を一にするものであり、会員企業は自社のみならず、グループ企業、サプライチェーンに対しても行動変革を促すとともに、多様な組織との協働を通じて、Society 5.0の実現、SDGsの達成に向けて行動する」と明確に日本企業がとるべき行動とSDGsの関係を定義したことは素晴らしいことだと思います。

SDGsビジネスの進め方については、世界各国も手探りであるのが実態です。SHIPは、そんな日本企業を支援するためのプラットフォームでありますが、SHIPの様々なプログラムを通して日本企業がこの分野で世界をリードするようになれいいな、と切に願っております。

 

イノベーション経営もSDGsビジネスもすべての国にとって試行錯誤の連続です。すべての国が同じスタートラインに立っている今、早めに試行錯誤を行い、自ら方法論を体得して結果を出していく企業が一歩先にいくのだと強く感じています。

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「西口尚宏のイノベーション日記」について;
「大企業からイノベーションは興らない」という定説を覆す活動に2009年に身を投じてから早や8年が経ちましたが、日々発見の連続です。おかげさまで、複数の加速支援先で具体的な成果が出始めたところですが、ご縁を頂きましたお一人おひとりに定期的に近況をお伝えする「西口尚宏のイノベーション日記」を2017年4月からお送りしています。西口からの私信という形を取らせて頂きますので、気軽にご高覧賜れば幸いです。
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