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活動報告

10/14開催「第2回JINイノベーション・マネジメントシステムサミット」レポート(第1弾)~大変革時代にはイノベーションの進め方も変わる!日米欧の最新の知見から~

コロナ危機によって、今までの社会の前提条件が消え去った今、イノベーションの世界ではどのような変化が起こっているのか? 800名超の登録者を前に、日米欧をオンラインでつないだ議論が活発に行われた「第2回 JINイノベーション・マネジメントシステムサミット――今、日本はどう変わるべきか――」(2020年10月14日に開催)の概要を伝えたい。

サミットの根底にある思想は、イノベーションは個人技で起こす属人的、偶発的なものから、イノベーション・マネジメントシステム(IMS)を基盤とする組織的・持続的に生み出す活動へ変化しつつある、というものだ。その上で、激変する社会変革への要求に、企業がどのようにイノベーションによって立ち向かうべきか、5時間にわたり多方面の有識者が議論を繰り広げた。IMSの国際規格として2019年にISO56002が発行され、急速に広まりつつあることが、世界のイノベーションの起こし方に変革をもたらしているのだ。サミットは「日本セッション」「欧州セッション」と「アメリカセッション」の3セッションで議論を交わした。

日本のイノベーションをどのように変えるべきか

冒頭の日本セッションでは、日本からの参加者に向けた現状把握/問題提起/議論が行われた。オープニングで、JIN Chairperson・理事の紺野登が現在の日本社会や企業の停滞した状況を俯瞰し、ここからの軸足転換の要になるのがイノベーション経営であることを説明。「ISO56002の標準化から1年経った今、イノベーション経営をどのように自分たちの経営で現実のものにしていくかを本サミットで問いかけ、日米欧の有識者の多角的な意見からウィズダムを感じて欲しい」と呼びかけた。

基調講演には、元京セラ会長兼CEOでJIN監事を務める西口泰夫氏が京都から参加し、イノベーション経営のための『自律的集合知の基盤』を提言した。 技術を生かす、組織を活かす経営を、追い求めてきた人生だったと語る西口泰夫氏は、個人が頑張るだけでなく、個人のベクトルを揃える為の効果的なイノベーション・マネジメントシステムの構築が必要と主張した。「個の自律的最適追求力」を高め、それを集合知にするための「自律的集合知の基礎」をイノベーション ・マネジメントシステムの観点から具体的なアプローチを説いた。

次いで、今回のサミット全体のモデレーターを務めるJIN代表理事の西口尚宏が、IMSの意味合いとゲームチェンジの現実を説明した。イノベーションを推進するためのIMSはスマートフォンのOSのようなもので、その上でデザイン思考やスタートアップ連携などのアプリが同期して成果を生み出すはずだが、日本は最新のアプリを導入するが、OSが古いままなので成果が出ないというアナロジー分析を披露した。その中で、イノベーションを起こすO Sの共通言語としてISO56002ができたことと、5つのゲームチェンジが全世界で同時に起こっていることを紹介した。これを受けて、4人のJIN理事がイノベーションについての持論を展開した。

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司氏は、「社員が幸せになると創造性が3倍、イノベーションも3倍になる」という幸せとイノベーションの関係の研究成果を発表。

明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科教授の野田稔氏は、イノベーションを実現する際に求められる人材のポートフォリオについて解説した。

ネットイヤーグループ株式会社代表取締役社長 CEOの石黒不二代氏は、DX(デジタルトランスフォーメーション)にも「守りのDX」と「攻めのDX」があり、攻めのDXに不可欠なサービスのデザインについて説明。

東京大学名誉教授でi.school エグゼクティブ・ディレクターの堀井秀之氏は、コロナ禍におけるイノベーション教育の実情を語った。

日本セッションの最後は、JIN理事・監事によるパネルディスカッションを行い、「IMSに魂を込めるにはどうしたらいいか」について議論を交わし、「人を中心にすることで、IMSが単なる仕組みから魂の込もった基盤に変えなければならない」という方向性を示した。

 

イノベーションマネジメントが新しい職業を生み出すヨーロッパ

2番めの「欧州セッション」では、「欧州はIMSにどう向き合っているのか?」をテーマに議論が交わされた。登壇者は3人。スウェーデン国立研究所(RISE)イノベーション・マネジメントシステム プロジェクト責任者でマグナス・カールソン氏と、アンプリファイ プレジデント パートナーのグンナー・ストーフェルト氏、フィンランド エスポー市 エスポーマーケティングCEOのヤーナ・トゥオミ氏である。

カールソン氏は、RISEでIMSの標準化に携わるほか、ISO TC279 イノベーションマネジメントのスウェーデン審議委員会委員長も務める立場から、「イノベーション推進のOSとして作られたISO56002は、国際的にコンセンサスを得られた共通言語であることに強みがある」と語る。また、イノベーションマネジメントにもプロフェッショナルとしての新しい職業が生まれていると欧州の現状を伝える。実際、スゥエーデンでは民間企業や医療機関でイノベーションマネジメントのプロフェッショナル人材を育成し、彼らが活躍する動きが始まっているという。

トゥオミ氏は、フィンランドの首都ヘルシンキからほど近いノキアの本社のあるエスポー市で、マーケティング企業を経営し、エスポー市の持続的な成長の実現に向けた活動を行っている。持続的な成長に欠かせないのがオープンイノベーションであり、そのためのエコシステムを提供しているというのだ。「エスポー市では、市、大学、スタートアップなどがエコシステムを作り、イノベーションのネットワークが作られている。こうしたオープンイノベーションエコシステムは、IMSそのものであり、IMSに基づくサービスを世界各国の企業が利用し、イノベーションの促進を推進している」(トゥオミ氏)。

その上で、3名の議論では、イノベーションにはテクノロジーを設計する前にまず直面している問題を理解する必要があること、IMSを導入してイノベーションのサイクルを機能させ、同時に自社の枠を超えた協力体制が求められることなどへと話題が展開した。。

 

米国の視点で見たイノベーションマネジメントの今

「米国セッション」では2つのパネルディスカッションが行われた。1つ目は「アメリカはIMSにどう向き合っているのか?」をテーマに、ISO TC279イノベーションマネジメント米国審議委員会委員長のフランク・ヴォール氏と、同副委員長のリック・フェルナンデス氏に意見を求めた。両氏は品質管理や品質管理システム(QMS)のプロフェッショナルであり、品質管理標準のISO9001を実践してきた流れから、IMS標準のISO56002への取り組みを続けている。

フェルナンデス氏は、「ISO56002では、意図を基点にしてイノベーションの価値を生み出すまでに、試行錯誤を繰り返しながらイノベーションを生み出すプロセスが含まれている。このイノベーション活動の部分の有無がISO9001との大きな違い」と語る。ISO9001は既存の製品を改善する規格であり、ISO56002は新しいものを生み出す規格であることであり、その差分がイノベーション活動に当たるというわけだ。

ヴォール氏は、「QMSは、コントロール、制御することにより品質を改善したが、破壊的な創造はそこにはない。QMSにより永続的に改善をしていく中で、創造的な破壊をするブレークスルーがありIMSができた」と語る。多くの企業がISO9001の認証を取得している日本でも、そこを始まりにしてイノベーション・マネジメントシステムを作り上げ、変革期を乗り越える可能性があることを示唆する。フェルナンデス氏は、「体系的な方法で、望み通りの成功を得る方法があったことに米国の企業や団体も気づいてきている」と語る。

2つ目のパネルディスカッションは「世界の動き:競争力強化とイノベーション」と題して、ロイヤル・ダッチ・シェルPLC会長のチャド・ホリデイ氏と、米国競争力評議会(COC)会長兼CEOで国際競争力評議会連盟(GFCC)会長のデボラ・ウィンススミス氏が意見を交換した。ウィンス-スミス氏は、「世界を突然襲ったコロナ禍のように、世界は常に予測不可能なものであり、そうした世界で生き抜く術としてはイノベーションとサステナビリティが求められる。コロナ禍が世界の岐路を浮き彫りにしており、変革をどのように進めていくかの分岐点に我々は立っている」と指摘する。

ホリデイ氏は、「コロナから学んだことを他の問題に適用しないのは問題だ」と指摘。その上で「シェルはエネルギーの会社ではあるが、その業態は過去に大幅な変化を見せている。これからはエネルギーのトランジションが必要であり、次のステップに踏み出すにはかつてないほど大きな課題に直面している」という。そこでは各国、各企業の協力が必要であり、一方で競争力も確保しなければならない。イノベーションには協力が必要であり、その上で競争を勝ち抜いていく「協力的競争」が求められることから、ウィンス-スミス氏がCEOを務める国際競争力評議会(GFCC)は「サステナブルな競争的協力環境を産学官で作っていく」という。

5時間におよんだサミットは、変革期においてイノベーションそのものに大きな変化が起きていることを浮き彫りにした。企業や社会、国家にとって、持続的でより良い未来を作るためのイノベーションの役割を、これを機に日本企業の皆さんとともに改めて考えていきたい。 次回に続く

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