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活動報告

2020/10/14開催「第2回 JINイノベーション・マネジメントシステムサミット」レポート(第2弾:日本セッション-前編-)-集合知を得るマネジメントシステムの導入が生産性向上に寄与-

遅れが指摘される イノベーションへの対応をどのように変えていったらよいのか。日米欧をつないで開催した「第2回 JINイノベーション・マネジメントシステムサミット(主催:一般社団法人Japan Innovation Network、以下JIN)」の日本セッションでは、世界でイノベーション経営へのゲームチェンジが進む中で、日本が取るべき進路についての提案や多くのヒントが与えられた。日本セッションのレポートの前編では、元京セラ会長の西口泰夫氏の基調講演と、JIN代表理事の西口尚宏によるイノベーション・マネジメントシステムの解説のトピックを紹介する。

個の暗黙知を共有するインフラをイノベーション基盤に

「組織内の個々がそれぞれの最適化を目指し、 “個の自律的最適追求力”を高め、さらにそれを集合知にするために“自律的集合知の基盤”が不可だ。そして、そのために、効果的なイノベーション・マネジメントシステム(IMS)を導入すべきだ」と力説するのは、基調講演に登壇した元京セラ会長兼CEOでJIN監事を務める西口泰夫氏。企業には、利益を得て持続的に成長し、社会的存在価値を高め、社員を含めたステークホルダーの幸せを追求することが求められる。これを実現するためには、組織や個人が課題に取り組んで成果を出すだけではなく、個の力を組織全体の集合知にすることが必要であり、この活動こそがイノベーション・マネジメントの役割だと西口泰夫氏は説く。

西口泰夫氏は、メーカーを例にとって、「新製品を市場投入したにもかかわらず、事業として価値を得られなかったということは少なくない。これはすなわち集合知を発揮できなかった一般的なケースだ。日本の製造業が世界的に負けているのは、集合知のマネジメントシステムがうまく機能していないからだ。これが日本の製造業の弱体化の原因だと考えている」と語る。同氏は、その経験から、米国やヨーロッパに比べて、単一民族的な日本では、組織からの距離が遠い場合のコミュニケーション能力が劣っていると指摘する。「知の多くが、暗黙知となって個人や小さな組織にとどまってしまっているので、組織的に共有し活用されることが少ない。多くの知が共有、活用されれば、驚くほど生産性向上が図れるはずだ」と続ける。

西口泰夫氏が提案する新たな組織経営論、「自律的集合知の基盤」は、新製品や新規事業を創造するイノベーション・マネジメントシステムと、各事業、拠点における活動をデータベース化してクラウドに蓄積するナレッジマネジメントシステムによって構成される。これらにより、これまで暗黙知として個に閉じていた知識を、企業全体の集合知として共有できるようになり、企業の目的を達成できるようになると力説した。

まったく新しい共通言語の提案「ISO56000シリーズ」

次いでJIN代表理事の西口尚宏が「イノベーション・マネジメントシステム(IMS)で何が変わるのか」と題してISO56000シリーズの解説を行った。まず「イノベーションマネジメントの国際標準であるISO56000シリーズは、59カ国が6年の歳月をかけて世界の知を集めて作った。国を問わず、既存組織からイノベーションを起こすのは難しく、その解決策が望まれていた。一方で、世界中でイノベーションの経験値は高まっていった。イノベーション競争が激化する中で、スタートアップ企業には共通言語が存在していて、相互に会話ができる。しかし既存企業のイノベーションには共通言語がなかった。そこで、IMSの新しい共通言語として、国際規格ISO56002ができた」と説明する。

実際、すでにIMSによってゲームチェンジが始まっていると西口は続ける。具体的には、
「イノベーション・マネジメントプロフェッショナルという職業が生まれる」
「地方創生にイノベーション・マネジメントの発想が生かされる」
「QMS(品質管理システム)とIMSが連携し始めている」
「そもそもの競争の概念が変化し始めている」
「IMSが形式知化されて共通言語化された世界では、一方で個人の思いや情熱や暗黙知、企業文化など目に見えないものの価値が高まる」
という5つのゲームチェンジが世界で同時に起こっているという。

全世界でイノベーションのOSのバージョンアップが始まってイノベーション競争が激化する中で、古いイノベーションOSを使い続けている日本企業はイノベーション活動の効率化が難しい。イノベーションのゲームチェンジが起こる中で、IMSを導入してイノベーション活動を実行し、さらにIMSを継続して改善していくことが求められていると、世界情勢と日本企業との差を比較して現状を解説した。

後編に続く