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活動報告

2021/10/28開催「第3回 JINイノベーション・マネジメントシステムサミット」開催レポート[第1弾]日本セッション1-JINフェローと日本のIMSの現状を分析し展望する

2021年10月28日(木)開催
【開催レポート1】 第3回JINイノベーション・マネジメントシステムサミット

2021年10月28日に開催された「第3回JINイノベーション・マネジメントシステムサミット」~日本のIMSの現状と未来への展望~について、当日の様子を3回に分けてお届けします。 

第1回の2019年10月のサミットでは、同年7月にイノベーション経営システムの国際規格ISO56002が発行されたことを記念して、海外のエキスパートもお招きし、日本で初めてその詳細に迫りました。続く第2回の2020年10月のサミットでは、ISO560002を取り巻く世界の動き、その中での日本の位置づけや課題をテーマに海外の有識者のオンライン参加を軸に開催しました。

第3回となる今回のサミットでは、事前に実施した「日経ビジネス電子版」の読者を対象とした「イノベーションに関するビジネスパーソン1000人調査」を軸に、大企業がイノベーション創出活動に取り組む際の課題と解決策に焦点を当てて、今後のイノベーション活動の方向性について、マネジメントシステムの観点で展望しました。

【日本セッション1】JINフェローと日本のIMSの現状を分析し展望する

  • 「イノベーションに関するビジネスパーソン1000人調査」報告と考察

まず、西口より、「イノベーションに関するビジネスパーソン1000人調査」についてご報告しました。
社会全体で進化圧が進む今、日本企業の危機感、対応策、イノベーション活動の成果を確認することを目的に今回の調査を行いました。調査の回答者は以下の1,017名です。

■「自社イノベーション活動の成果に手応えがない」のは63%
調査の結果、自社のイノベーション活動について、「手応えがある」と回答した人は31%、「手応えはない」と回答した人は63%という結果になりました。この、「手応えある組」と「手応えない組」の回答パターンを比較することで、「さらに手応えを得るための示唆」を見出そうと分析を進めました。

■「勤務先の将来に関する危機感」がイノベーション成果に手応えある組とない組で異なる
実は「日本のビジネスパーソンは危機感が足りないのではないか」という仮説が調査前にはありましたが、両者は起こりつつある変化については同じ問題意識を持っていました。

一方、今後10年間の勤務先の将来に関する危機感については大きな差が出ました。「手応えない組」は「自社でイノベーションが起こせないこと」や「ビジネスモデルの陳腐化」、「技術革新への乗り遅れ」に危機感を感じているのに対して、手応えある組は「優秀な人材の採用難、退職」「技術革新への乗り遅れ」「新規の競争者の出現」に危機感を感じていたのです。前者はまだ漠然とした不安を感じている段階で、後者は既に具体的な活動を進める中で危機感が具体化したと言えそうです。

■「イノベーションを起こす経営体制の構築」が最大の差
この危機感に対する両者の取組みにおいて、最大の差が「イノベーションを起こす経営体制の構築」にありました。これはまさにIMSの整備のことです。

次に、IMSの施策の実現度について20個の質問を行い、以下の6パターンに分類しました。 

このうち、手応えを感じている「IMS導入初期型」と「IMS駆動形」の特徴を見ると、今後我々が取り組むべきヒントが見えてきます。

■日本がイノベーション国家になるかどうかは人事部が握っている
IMS構築には、「経営者無理解の罠」「風土改革の罠」「目的地不明の罠」「試行不全の罠」「旧型人事の罠」という5つの罠の存在も見えてきました。今回の調査で顕在化した課題は、硬直した人事制度、特に評価制度の問題です。人事部がイノベーションを加速する立役者になるのか、足を引っ張るのか、それは人事部、そして経営者の判断に委ねられています。

「イノベーション活動の手応えはIMSの充実度と正比例し、IMS構築の旅を進めるためには3つのコツがあります。1つ目はIMS施策の順番を間違えないこと、2つ目は仮説に基づく試行錯誤を主軸に施策を全部やること、3つ目は人事部が成果実現の鍵を握っているということです。」と、最後にまとめて、西口の発表は終わりました。

■ミドル層がイノベーション推進のリーダーとなれ
ここまでの内容を受けて、2008年からオープンイノベーション活動に取り組むJIN常務理事の松本毅より、オープンイノベーション成功のための3つの要素について提言がありました。

・トップがイノベーションに対して本気でコミットメントする

・ミドル層がイノベーションに向けてしっかり取り組む

・現場で活躍するイノベーターのやる気の醸成を図る

中でも、ミドル層がイノベーション推進リーダーとして舵を取ってプロジェクトを進めることの重要性を説きました。

  • パネルディスカッション

次に、これまでの調査結果を踏まえ、JINフェローを迎えてパネルディスカッションを行いました。 
パネルディスカッションに登壇したフェローのみなさま  ※敬称略

津田 真吾  INDEE Japan 代表取締役 テクニカルディレクター 共同創業者

吉田 直樹  株式会社三菱総合研究所 参与
津嶋 辰郎  INDEE Japan 代表取締役 マネージングディレクター 共同創業者
小山 龍介  株式会社ブルームコンセプト 代表取締役
田所 雅之  株式会社ユニコーンファーム CEO ※ビデオ出演
守屋 実   新規事業家 ※ビデオ出演
石川 明   株式会社インキュベータ 代表取締役 ※ビデオ出演
モデレーター 西口 尚宏

多岐に渡り興味深い議論が展開されましたが、その中から4つのポイントをご紹介します。

■動いた時に見える危機感と動いていない時の漠然とした危機感は性質が違う
10年後の勤務先の将来に関する危機感について議論を行う中で、当事者として主体的に動くほど具体的な課題意識や危機感が生まれることや、手応えを感じられることなどについて議論しました。「動いた時に見える危機感と、動いていない時の漠然とした危機感は明らかに性質が違うので、まずは動くこと。」と西口がまとめました。

■53%のIMS未実施の企業にはポテンシャルがある
44%の人たちがIMS施策にまだ取り組めていない「IMS夜明け前型」、9%の人が「IMS不在個人奮闘型」であり、この53%にはここから大きく成長するポテンシャルがあるという話題になりました。
これに対し吉田氏は「人類の歴史を紐解くと、厳しい気候変化や環境に適応してきた歴史そのものです。つまり人は、イノベーション的な取り組みを本来得意としているのではないでしょうか。余計なしがらみは外して取り組んでいってほしいです」と述べました。

■人事評価制度は現場では変えることができない
経営者の罠についての議論が、人事制度を変えていかなければならないという話題にシフトしたことは非常に重要な示唆であるという話題から、「人事評価制度は現場で変えられるものではなく経営判断なので、人事部が孤軍奮闘をするのではなく経営者と一緒に変えていくことが重要」と西口は説きました。

■仮説検証は「当たり前の確認」になってはいけない
「仮説検証するときに、もともと検証されているような当たり前の仮説しかぶつけないことが多くある。」と津田氏から指摘がありました。これに対し、「仮説検証では当たり前の確認ではなく、五分五分くらいで間違っていても常に攻めの内容になっていないといけない。その進歩をいかに作り出すかに大きなチャンスがあると感じます。」と西口はまとめました。

最後にフェローより一言ずついただき、「完璧な人間も社会もIMSもないので、私たちは終わりのないワクワクするIMS構築の旅を一緒にやっていきましょう。」とまとめ、日本セッション1は終了しました。

【セッション1を振り返って】
セッションの最中に「IMS施策の実現度」について、参加者のみなさまにも緊急アンケートを取りました。その結果、「IMS夜明け前型」が40%、「IMS不在個人奮闘型」が19%と、全体で59%の方々が「IMSはできていない組」である事がわかりました。一方で、「IMS導入初期型」が23%、「IMS駆動型」が3%いらっしゃることもわかりました。また、「IMS施策間違い型」が13%、「IMS失速型」も1%という結果もわかりました。これは1000人調査の結果とほぼ同じ割合で、現在の日本の実態と言えます。今回のセッションを通して、各々がIMSについてどういった立ち位置でいるかが明確になったかと思います。イノベーティブな活動の成功確率を上げるためのIMS構築の旅は、まだ始まったばかりです。ぜひ、IMS構築の旅に出かけましょう。

IMSの構築の旅を始めてみたい方はこちら

第2回のレポートでは、「日本セッション2 企業の現場の実践者の声、未来への展望」についてお届けします。