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活動報告

2020/10/14開催「第2回 JINイノベーション・マネジメントシステムサミット」レポート(第6弾:欧州セッション-後編-)-企業、病院、地域で具体化する欧州のイノベーションマネジメントの今-

日米欧をつないで開催した「第2回 JINイノベーション・マネジメントシステムサミット」(主催:一般社団法人Japan Innovation Network、以下JIN)」の欧州セッションでは、中編のレポートまでで、IMSのプロの育成と、地域におけるイノベーションのエコシステム構築について議論を交わした。

登壇者は、スウェーデン国立研究所(RISE)イノベーション・マネジメントシステム(IMS) プロジェクト責任者でJINアドバイザーのマグナス・カールソン氏と、アンプリファイ プレジデント パートナーのグンナー・ストーフェルト氏、フィンランド エスポー市 エスポーマーケティングCEOのヤーナ・トゥオミ氏。終盤は欧州のIMSの具体的な取り組みについて話題が広がった。

いまスウェーデンの病院でIMS導入を推進する理由

中編までの議論を受けて、イノベーション人材を配置して病院がIMS構築に取り組んでいるスウェーデンの事情について、カールソン氏を中心に議論が進んだ。カールソン氏は、「過去数カ月、ヘルスケアセクターの医療体制維持の状況が世界中で厳しかった。カロリンスカ大学病院でも、こうした状況に迅速に対応するためのイノベーションが必要であり、イノベーションマネジメントのスキルが迅速な問題解決のために不可欠だった」と指摘する。

トゥオミ氏もフィンランドのエスポー市の状況を「このようなIMSをほかの病院に導入できないか、エスポーのエコシステムではどう対応できるか、非常に興味がある。ヘルスケアのセクターは、イノベーションの導入が進んでいて、多くのスタートアップがヘルステック、ヘルスケアセクターをサポートしようとしている。フィンランドの病院でもIMSが多く見られるようになることを楽しみにしている」と展望を語る。

一方で日本についてJIN Chairperson・理事の紺野は「ヘルスケアのコストは日本でも大きな負担になっている。ヘルスケアのイノベーションはまさに大きな課題であり、多くの病院がIMSを導入すべきだと思う。ヘルスケアのセクターでは迅速にゲームチェンジをしないと、新型コロナウイルスを始めとした感染症対策が継続して求められる今後のイノベーションに対応できなくなる」と厳しい指摘をした。

ストーフェルト氏は、「強いイノベーションマネジメントの能力が、変革を推し進める力であり、潜在力を最大化することに寄与する。これはヘルスケアセクターでも公的機関でも、民間でも同じ。新しいものを作るには、新しい考え方と推し進める筋肉が必要。アンプリファイでは、変革の推進力になる準備を支援していく」と語った。

今まさに変革が起きていることを理解すべき

こうした議論を受けて、西口は「変革がそこまできていることを実感した。私たちは、今まさに変革が起きていることを理解しなければいけない」と語った。

カールソン氏は、「エリクソンの事例を見ると、広範な観点でIMSに投資をしていれば広い視点が得られることがわかる。IMSの対象はテクノロジーだけではなく、サービスや製品をどう顧客に届けるかまで拡大する。そうした広範な視点のイノベーションが、企業の存続につながる。エリクソンからは、IMSがあれば少ない投資でバリューを生み出せること、あらゆるオプションをテーブルの上に並べて戦略的にイノベーションができることが学べる」と分析した。

最後に西口は、「今日の議論から3つの視点を引き出すことができた。1つ目は『IMSという新しい仕事、職種ができた』ということ。スウェーデンではすでに新しい現象ではなく、大学病院や企業で使われている。スウェーデン以外の国ではまだ新しいことであり、学ぶべきことは多い。2つ目は『エスポーでは本当にイノベーションのエコシステムを作っている』ということ。IMSのエコシステムが企業を本当にサポートし、日本、アメリカ、ヨーロッパなど世界中の企業のイノベーションのプロセスをフィンランドに集結することに成功している。エスポーはフィンランドの磁石として世界中の人を集めている。そして3つ目は、『話すだけでは変革は起こせない』ということ。実際に行動をしなければならない、そのためには行動の準備をしないとイノベーションは起き得ない」と得られた気づきをまとめて、欧州セッションを締めくくった。

次回、アメリカセッション(1)に続く。