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2020/10/14開催「第2回 JINイノベーション・マネジメントシステムサミット」レポート(第9弾:アメリカセッション(2)-前編-)-コロナ禍で予測不能性を体感した世界が変革とイノベーションを実現するには-
イノベーション・マネジメントシステム(IMS)の必要性と活用策を国内外の視点から探る「第2回 JINイノベーション・マネジメントシステムサミット」(主催:ジャパンイノベーションネットワーク、以下JIN)、締めくくりは「世界の動き:競争力強化とイノベーション」をテーマにした、アメリカセッション(2)のパネルディスカッション。
登壇者はロイヤル・ダッチ・シェルPLC会長のチャド・ホリデイ氏と、米国競争力評議会(COC)会長兼CEOで国際競争力評議会連盟(GFCC)会長のデボラ・ウィンス-スミス氏。JIN代表理事の西口尚宏と、JIN Chairperson・理事の紺野登氏が加わり、イノベーションに関する世界の動向を読み解いていった。
世界の変化の原因はコミュニケーションの速度にある
まず、西口が2人の登壇者を紹介に続いて「世界が変わってきているいま、重要な変化は何か、今後どんな変化が起こるかいついて尋ねたい」と切り出した。
ホリデイ氏は、世界の変化のひとつの原因を、コミュニケーションの速度に見出す。「SNS等の普及で他の世界で何が起こっているかが瞬時にわかるようになり、非常に大きなインパクトがあるが、これがいい方向に向かうかどうかが問題だ」という。
一方で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については「「今、かつてないほど迅速にイノベーションが起こっている、後から振り返ったら、もっと良い対処法があったと考えるかもしれないが、ワクチン開発も、さまざまなツールがあることでイノベーションの速度が高められる。解決策を生み出すことは重要だが、それを迅速に配信することはもっと需要だ、私たちは、それをコロナ禍で学んだ。この学びを、気候変動や貧困など他の社会的課題の解決に適用できれば価値がある。逆にコロナ禍で学んだことを適用しないのは大きな問題だ」とホリデイ氏は語る。
ウィンス–スミス氏は、私たちが生きているいる今の時代は、文明がかつてないほどシフトしていると言う。そうした中で私たちは、将来の世界の秩序がどうなっていくのかを共同で設計している段階にある。持続的な繁栄や安全保障という目標を達成できるのかどうか、私たちが高い目的を達成できるのかの転換点にいる。新しい未来をナビゲーションしていくには、イノベーションを実現し、キャパシティを上げて、イノベーションの民主化を図ることが必要だ。そのとき、多くの人々がイノベーションのリーダーになれる」。
そうした転換点にいる私たちにとって、科学の立ち位置にも意識をはらう必要がある。ホリデイ氏は、「米国では、科学者に疑問の目が向けられている。これは行き過ぎだと思う。科学に関する理解を深めなければならない。例えば、2人の科学者がう意見を持つことが、当たり前だと理解しなければいけない。多くの科学は微妙なものであり、それを理解することで初めてイノベーションが前進する」と語った。
これを受けて、紺野氏は「科学についてのホリディ氏の考えに感銘を受けた。今、科学は経済的な戦いのツールと化しているかもしれない。しかし本来は人類の生活や、考え方、生き方を良くするもの。科学のもつ社会にとっての意味の本質を理解するということは重要だ」と語った。
イノベーションとサステナビリティによって脅威に対する強靭性を
こうした変化を乗り越える中で、重要なポイントがあるとウィンス–スミス氏は続ける。「持続可能性のための行動や尺度をすべての社会活動において実践していくことが求めらる。、つまり、トータルクオリティマネジメントをすべての事業活動で実践しなければならないのだ。そのためのオペレーションのプラットフォームを作る必要がある」。
また、ビジネスも国家も、一般の人々さえも、予測できない脅威に備えなければならない。世界は予測不可能性が高まっている。ウィンス-スミス氏は、「人類はこれまでも常に予測不可能な中で生き抜いてきた。イノベーションとサステナビリティによって、脅威に対するより高い強靭性を持つことが、この世界を生き抜く術だ。私たちは本当に大きな移行期、転換期の中を生き抜こうとしている。変革が起きているだけでなく、加速化もしている。グローバルなパンデミックのように破壊的な現象が大変なスピードで起こっている。世界は今、岐路に立っている。リーダーや国家がどのような選択をするかによって、その結果は変わってくる」と語る。
さらにホリデイ氏は、「未来は若者たちのためにある。例えば気候変動に対する議論で若者が立ち上がり、大胆に声を上げるようになった。現在のリーダーに声を聞いて欲しい!と立ち上がっている。今のリーダーが彼らの動きや考え方を導入すれば、もっと変革に弾みが付くはず」と可能性を見出す。
ウィンス-スミス氏は、「若い人だけでなく知識を持った人々が協力することが重要だ。岐路に立っている現実を互いに認識して、リスペクトする必要がある。これまでの繁栄には“信頼”や“正直さ”がなければならなかった。しかし、現在アメリカでは、信頼が揺らいでおり、政治的には大統領選でも信頼が分断している」。若い人たちとの信頼をどう再構築するかが、持続可能な社会の繁栄をもたらすとの分析だった。
アメリカセッション(2)中編に続く。