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活動報告

2020/10/14開催「第2回 JINイノベーション・マネジメントシステムサミット」レポート(第11弾:アメリカセッション(2)-後編-)-コロナ禍で予測不能性を体感した世界が変革とイノベーションを実現するには-

5時間に及ぶ「第2回 JINイノベーション・マネジメントシステムサミット」は、このセッションでまとめの時を迎えた。アメリカセッション(2)レポートの後編も、ロイヤル・ダッチ・シェルPLC会長のチャド・ホリデイ氏と、米国競争力評議会(COC)会長兼CEOで国際競争力評議会連盟(GFCC)会長のデボラ・ウィンス-スミス氏と、JIN代表理事の西口尚宏、JIN Chairperson・理事の紺野登氏が白熱のディスカッションを続けた。

経営者は何を見ているか

ホリデイ氏は経営者がいかに、新しい競争環境に取り組むべきかについてのエピソードを語った。「シェルは元々、貝殻を輸入していたのでこの社名が付いている。しかし、会社の業態は当時から大きく変わってきた。これまでの大きな変化と同様に、次のステップに踏み出すのは、かつていほど大きな課題に直面している時だ。シェルの場合、それはエネルギーのトランジションだ」。

シェルはエネルギー会社であり、クリーンなエネルギーを提供することが今後更に求められている。そのための新しい技術の開発は、各国で協力して行っていても、さらに進める必要があり、時間がかかることも事実だ。例えば、いつ航空業界に優れたエネルギーシステムを提供できるか、つまり燃料を減らし、効率をあげ、バイオ燃料に移行し、低炭素なエネルギーに移行できるのかが課題だ。

ホリデイ氏は、「セクターごとの取り組みがグローバルで迅速に求められる。これは国ごとというよりも業界単位での取り組みになる。航空、輸送などの業界に加えて、個人の輸送では水素が重要な役割を果たすと思っている。電池も重要だ。他のシステムも関わってくるかもしれない。こうした全体のシステムは、顧客とともに作っていくことになる。実質排出ゼロ(ネットゼロエミッション)を今世紀半ばまでに達成しようと、顧客とともにイノベーションを進めているところだ」と語る。

さらにホリデイ氏は、日本の経済産業省が進める水素社会への取り組みについても言及した。「水素がいかに経済の中心的な役割を果たすかを理解し、国として取り組む日本を称賛したい。日本では水素で動く燃料電池を動力とする船舶を作った。液化水素を使ったもので、シェルは喜んで協力して開発をサポートした。水素経済にとって、日本の努力は重要なものだ。努力を続けることが必要であり、まだコストが高い水素も、風力や太陽光も学習曲線によって低コスト化したように、世界のエネルギーシステムにインパクトを与えるときが来る。日本のリーダーシップに感謝したい」。

一方で、ウィンススミス氏は、GFCCの立場からコメントした。「業界が研究開発で遅れを取ってはならない。新規参入では中国が特に注目される存在となってきた。投資金額だけでなくて生産量や、新しい企業の創出も進んでいる。グローバルな企業のリストを見れば10年前と比べて中国の台頭がわかる。効率性の追求だけでなく、エコフレンドリーな研究開発も求められる今、イノベーションとしての成果が研究開発から得られるかどうかが重要なポイントである」と語った。

終わりに、西口はセッションを次のようにまとめた。「アメリカと日本はより高度な競争的な協力ができるだろうということがわかった。アメリカは最大の民主主義国家であり、日本はその次に位置する。両国の協力によってよりよい未来をつくることができる。他国も取り込みながら、日米でよりよい未来を目指したいと思う」。5時間のセッションはここで幕を閉じた。

イノベーション・マネジメントシステム(IMS)の標準化は世界の企業の誰もが同じ土俵で、システマティックにイノベーションを起こせるようになったことを意味する。そして、コロナ禍への対応からサステナブルな世界の創出に向けたイノベーションが、さらに高い価値を生み出すことが浮き彫りになった。今回のサミットは、こうした我々を取り巻く現状と今後の課題、そして目的を明らかにする好機となった。のべ500人の参加者が熱い思いをもってサミットに参加した、ここで改めて皆様に感謝を申し上げたい。